近年、「樹木葬」という言葉が一般的になりました。
自然に還るという思想が共感を呼び、特に都市部では人気を集めています。
一方で、「樹木葬はお墓とは少し違う」と感じる人も少なくありません。
ですが実際には、樹木葬も立派なお墓の一つなのです。
もともとの樹木葬は、山や里山に眠り、樹木を墓標とする自然葬のスタイルでした。
しかし、最近では形が変化し、都市部ではプレートや小さな石碑を設ける都市型樹木葬が主流になっています。緑に囲まれた庭園風の空間に個人や夫婦で納骨し、その上に石のプレートを置くスタイルです。樹木葬という名前のとおり自然を感じながらも、しっかりと“お墓”としての機能を持っています。つまり、自然葬の理念と、都市生活者の現実的なニーズを融合させた新しいお墓といえるでしょう。
都市型樹木葬の魅力は、なんといっても管理の手軽さです。永代供養が付いているものが多く、跡継ぎがいなくても安心して選べます。
また、プレートに名前を刻むだけというシンプルなデザインは、ミニマルで現代的な感性に寄り添っています。明るく、穏やかな雰囲気も魅力のひとつです。
一方で、従来のお墓には記憶を形に残す力があります。
石碑に刻まれた名前や戒名、花や線香の香り――それらはすべて、祈りを具体的なかたちにする要素です。風雨に耐える石のお墓は、世代を超えて家族の想いをつなぎ、人生の連続性を感じさせてくれます。訪れるたびに「ここに自分のルーツがある」と思える安心感があるのも、お墓ならではの良さです。
樹木葬もお墓も、どちらも「お墓」で、「大切な人を想う心」から生まれた供養のかたちなのです。
